本研究では、東京・神奈川のビジネス街や人口密集エリアを中心に、カフェやファストフード店、コワーキングスペースなどに設置されたスマートフォンやPCの充電用コンセントについて情報共有できるウェブサイトを、OpenStreetMap(OSM)を用いて運用することを目標とした。既存の充電マップでは把握できない「会議や面接が可能か(話せるか?)」に着目。さらに、ユーザー自らスポットを登録・編集できる機能や、口コミ投稿、賑やかさ5段階評価など施設内の情報について情報共有できる機能、アカウント作成によるOSMクエストやお気に入り登録機能などのオリジナリティ・OSMへの還元性を追加した(Claudeを活用)。
ウェブサイト作成後は、充電可能な店舗や作業用スペースを記録した(Firebaseを利用してデータを保管)。今後は、より多くのスポット登録や機能の追加を行い、外出先で会議可能な場所や充電場所を必要とする社会人や、就職活動中の学生にとって利便性のあるサイト作りを目指す。
本研究の問いは、①既存のOSM地図で充実しきっていない「話せるか」という情報を、地図でどれだけ集められるか、②集めた情報を現地確認によって信頼できるものにし、OSM に還元できるか、③ゲーム・クエスト要素で利用者の継続的な参加を促せるか、の3点である。
青山学院大学 地球社会共生学部 地球社会共生学科
稲田 優花 / Yuka Inada
学生番号 1A123023
指導教員 古橋大地教授
©︎Furuhashi Laboratory/Yuka Inada,CC BY 4.0
1 背景
外出先での充電コンセント探しは、多くの学生・社会人にとって日常的な悩みである。カフェやファストフード店の一部には充電可能な席が用意されているが、どの店舗のどの席で充電できるのか、実際に座ってみるまで分からないことが多い。また、就職活動時に面接やWebテスト受験のためコワーキングスペースを利用した際、充電器の有無に加えて、静かで集中できる環境なのか、話して良いスペースがあるかなどを口コミサイトなどで調べるのが面倒だった。そこで、充電や勉強、面接に最適なスペースをユーザー参加型で共有できるウェブサイトを作成した。
既存の充電マップやDENGENCAFEには、利用者自身が現地でスポットの登録や具体的な情報の書き込みがてきる「シェア要素」星やコメントを付けられる「口コミ要素」はない。参加型にすることで、充電可能な座席や雰囲気などの情報も付け加えられ、継続的に蓄積される地理空間情報として扱える価値になると考えた。そこで本研究では、OSMをベースマップとし、ユーザー全員で情報共有できる「Spot Share Map」を開発・運用する。
2 初代バージョン
初代バージョンは、以下のような機能を持つプロトタイプとして公開した。
・OSMによる地図表示
・現地調査結果の投稿フォーム(店舗名、最寄り駅、徒歩分数、カテゴリ、営業時間、現地調査メモ)
・カフェ・喫茶店/無料スペース/図書館/コワーキング/その他のカテゴリのみの分類
・最寄り駅名での検索
・地図をタップしてピンを置く方式の位置登録
3 初代からの主な変更点
| 項目 | 変更前 | 変更後 / 内容 |
|---|---|---|
| 位置登録 | 無反応バグ | 駅名を入れても無反応であったバグを修正 |
| 検索方法 | 最寄り駅名 | 駅名・店名の両方に対応 |
| 投稿項目 | 簡易チェック | 無料/Wi-Fi/電源の簡易チェックに加え、オンライン面接・Web会議OKなど利用シーン別の項目 |
| 営業時間 | 自由に入力 | 24時間営業かチェック+時刻ピッカーによる構造化入力 |
| 評価機能 | 現地調査メモ | 口コミをユーザーが自由に投稿・削除できる機能に変更 |
| デザイン | 紺色のみ | 3色のテーマとオリジナルキャラクターを採用 |
| 利用状況 | 確認不可能 | ユーザーの利用状況に関する分析サイトを公開 |
改良版では、他の利用者にも使ってもらうことを前提に、投稿のしやすさや情報の信頼性(編集・削除の仕組み)、継続的な利用を促す仕組み(お気に入り、通知)を重視して機能を見直している。
4 研究目的
本研究の目的は、OSMを用いた充電・作業スペース共有サイト「Spot Share Map」を開発・運用し、実際のフィールドワークによって現地情報を蓄積しながら、利用者が投稿・検索・比較しやすいサイトへと改善していくことである。なお、既存の充電マップでは扱われていない機能の拡充を通じて、外出先で充電場所や作業スペースを探す学生・社会人の利便性向上に貢献することを目指す。
5 現時点での課題
・参加型の地図サービスとして、どのように共有すれば新規のユーザーを獲得できるか。
・現地調査によって得られる情報や口コミは、利用者の店舗選びに本当に影響するのか。
・どのような機能を追加することができれば、継続的に利用してもらえるサイトに成長するのか。
1 システム概要
Spot Share Mapは、ClaudeとCodex、Firebaseで、OSMをベースマップとして利用して作成している。
| 番号 | ツール名 | 用途・役割 |
|---|---|---|
| 1 | Claude / Codex | コード生成 |
| 2 | Firebase | 投稿データの保存 |
| 3 | OpenStreetMap | 地図 |
| 4 | GitHub Pages | サイト公開 |
| 5 | Leaflet | 地図表示 |
| 6 | OpenFreeMap | OSM ベースの地図デザイン |
| 7 | Overpass API | OSM データの検索 |
| 8 | Nominatim | 駅の位置検索 |
| 9 | OSM API/OAuth2 | OSMへの書き込み |
| 10 | GitHub Actions | アクセス解析の自動集計 |
コードの生成にはClaudeとCodexを併用している。最初の作成から、現在の機能追加や不具合の相談まで、チャット形式でClaude、Codexに投げ、改善案や実装コードを受け取りながら、自身の動作確認や提案も繰り返しながらより良いサイトにしていく予定だ。
※Claude=Claude Sonnet 4.6,2026-6~11月現在
※Codex=GPT-5.3-Codex,2026-6~7月まで
2 主要となる機能
右手にある「場所を登録」ボタンより新規スポットを追加することが可能。完成された投稿は、地図上にピンとして表示され、カテゴリや徒歩分数、お気に入り登録の有無で絞り込み、ユーザー全員が検索できる。
* クエスト → メモ/直接編集 の流れ
* 付けているタグ(power_supply、internet_access、source=survey、hashtags=#spotsharemap)
* 表示名の扱い(本名を出さない)
* 推定で埋めない方針(OSM・現地確認・公式サイトの情報だけ)
* 他サイトの情報は参考リンクにとどめ、OSM には送らない
* ライセンス(OSM 由来=ODbL、サイトのデータ=CC BY 4.0)
3 現地調査
自分以外のユーザーが新規スポットの登録が完了した通知が自身のアカウントでのみ一覧で見られるように設定している。そのため、店舗やスペースに足を運んだり、口コミサイトを見るなどして、充電可能な席の有無やWi-Fi環境、混雑状況が正しいか確認し、逐次「現地確認済み」のタグを設定。また、不適切な口コミやスポットの登録がなされた場合の削除申請・通報ボタンや、免責事項についての説明欄も設定してある。
4 分析・可視化
サイトの利用状況を把握するため、投稿された総スポット数や日々の訪問者数などを表示する分析用のウェブサイトを別途公開している。(Spot share map 公式 | アナリティクス)これにより、自分自身が運用状況を把握できるだけでなく、SNSでの告知を通じてユーザーにも活動の広がりや貢献度を示せるようにしている。GitHub Actions で1日4回自動集計している(60日ルールでサーバー停止してしまうハプニングが起き、その対策として行った)。
【中間発表時点での進捗】
2026年8月時点では、初代版の公開後、検索・投稿フォーム・編集削除・デザイン・アカウント機能について、自分自身の使用感を踏まえた改善を継続的に行っている。
投稿フォームには、無料利用可否・Wi-Fiの有無・電源の有無に加えて、オンライン面接やWeb会議に利用できるかどうか《しゃべれるか》のチェック項目を新たに追加した。これは、充電・作業スペースとしての利用だけでなく、就職活動や在宅勤務に関連する利用シーンも想定した項目である。営業時間の入力についても、自由記述のテキストから、24時間営業のチェックボックスと開始・終了時刻を指定する形式に変更し、入力のばらつきを減らした。
広報・フィードバック収集としては、公式Xアカウントを開設し、サイトの使い方を4コマ形式でまとめた案内画像や、機能追加のお知らせを発信している。学生が運用していることを明示し、改善点などをDMで受け付ける体制をとることで、利用者からフィードバックを得られるようにしているが、そもそも新規ユーザーやフォロワーが増えないという大きな課題にぶつかっている。
OSM のお店データ7,396件のうち、電源の情報があるのは18件だけだったことは大事な結果!OSM には電源の情報がほとんどないという事実が、このサイトで集めて還元する意味の裏付けになる。
1 現地調査の意義
既存の充電マップやWi-Fiマップは、店舗単位での「電源あり」「Wi-Fiあり」といった情報にとどまることが多く、実際に座ってみないと分からない席の位置や混雑状況までは扱っていない。本研究では、現地に足を運ぶことによって、どこに充電器があるかという所まで把握できるようなサイトにすること、参加型でスポットや口コミの投稿、星5段階の評価ができることなど、既存サービスでは得にくい実用的な情報を蓄積できると考えられる。 今後、現地確認を行う上で「○件確認して○件が閉店・営業時間違い」という記録も残したい。
2 現在の課題
・投稿データの信頼性を保ちながら、誰でも編集・削除できる仕組みをどこまで許容するか検討中である。
・口コミの投稿など、不適切なコメントへの対応方針をより確りと定める必要がある。
・ユーザー参加型のサイトであるため、投稿数が少ない段階では地図上の情報が偏っている。今後、投稿データの蓄積とともに、新しいユーザーや長く利用して下さるユーザーの獲得方法を考えていく必要がある。
1 最終的な目標
卒業論文の最終ゴールは、以下の3点とする。
1. 継続的に投稿・検索・利用されるサイトの運用
2. フィールドワークによる情報の蓄積
3. 利用状況の分析と改善を続ける
2 今後の作業
今後は、現地調査によるスポット投稿と並行して、投稿データの信頼性確保、ユーザーの確保、SNSでの発信などを進める。また、蓄積したデータや見えてきた課題を分析・改善しながら卒業論文としてまとめていく。