本研究は、Wheelmap公式3Dプロジェクトとの連携を通じて、車椅子利用者の移動判断に必要な立体アクセシビリティ情報を整理し、町田駅周辺を対象に2D・3D表示の有用性を比較するものである。
昨年度は、WheelmapとOpenStreetMap(OSM)を用いて町田駅周辺のアクセシビリティ評価を4件から60件へ拡充した。一方、施設の点情報だけでは、出入口、エレベーター、階層、段差、勾配などの連続的な移動条件を表現しにくいという課題が残った。
今年度はOSM、Wheelmap、PLATEAU、現地調査結果を組み合わせ、公式プロジェクトへ再利用可能な要件・データ・評価結果として還元することを目指す。
| 名称 | 内容 | リンク |
|---|---|---|
| 新宿駅 立体アクセシビリティ表示案(3D+2D) | OSMの実データで新宿駅周辺を3D表示し、地物を選ぶと2Dの階平面図で階内の位置を確定する表示案モックアップ(パソコン向け) | 公開ページ ・ 説明(#3) ・ ソース |
- 3D全体表示:建物と、車椅子対応状況のピン(全面・一部・非対応・不明)を立体で表示する。
- 各ピンから床まで縦線を引き、その地物がどの階にあるかを指し示す。
- 階の違いが分かるよう、高さ(建物・階の間隔)を実際の2.5倍に強調している。
- 地面の境界線:地面(GL)を茶色の線で示し、その下に地下の断面を表示する。地下の地物は地面まで線を伸ばし、地上の地物と区別できるようにしている。
- 3D+2Dの分割表示:ピンを選ぶと画面が左右に分かれる。
- 左の3D:選んだ地点の周りをゆっくり回転しながら、建物と階の高さ(Z)を示す。回転は一時停止できる。
- 右の2D:その階の屋内平面図で、階内の位置(X・Y)を示す。階ボタンでは、1FとB1Fの間に「地面」の区切りを入れている。
- 同じ位置で複数階にある地物(インドアタギング):
levelに複数の階があるもの(例:level=-1;0)やrepeat_onで複数の階にある地物を、1つの地物として表示する。- エレベーターは停止階をつなぐ縦の柱、トイレなどは点線でつながった各階のピンで表示する。
- インドアタギング作成ツール(現地調査用):詳細欄で地物がある階を選ぶと、OSMに登録するタグを作ってコピーできる。
- エレベーターは
level=-1;0;1、それ以外はlevel=-1+repeat_on=0-3の形で作る。 - 「この画面に反映」で表示を確かめられる。OSMへは自動で書き込まない。
- エレベーターは
- データの現状:
- 階情報(
level)のある地物は1,109件中637件(57%)。 - 階情報がない地物には警告を出し、OSMの編集ページへのリンクを表示する。
- 階情報(
| パス | 内容 |
|---|---|
mockup/shinjuku/index.html |
公開ページ本体。データを埋め込んだ1つのHTMLで、gh-pages ブランチと同じ内容 |
mockup/shinjuku/src/shinjuku-template.html |
画面のテンプレート(HTML・CSS・JavaScript) |
mockup/shinjuku/src/data/ |
OSMから変換した軽量データ(2026-11-04取得) |
mockup/shinjuku/src/tools/ |
OverpassのJSONを軽量データに変換するスクリプト(PowerShell) |
mockup/shinjuku/src/build.ps1 |
テンプレートとデータを組み合わせて index.html を作るスクリプト |
テンプレートを編集したら、次のコマンドで作り直す。
powershell -ExecutionPolicy Bypass -File mockup/shinjuku/src/build.ps1 -DataDir mockup/shinjuku/src/data -PagesOut mockup/shinjuku/index.html公開は gh-pages ブランチの mockup/shinjuku/index.html から行っている(GitHub Pages)。
地図データ:© OpenStreetMap contributors(ODbL)
Wheelmapは、OSMを基盤として施設の車椅子対応状況を信号色で表示するクラウドソーシング型地図である。Mobasheri et al.(2017)は、Wheelmapがアクセシブルな施設情報の収集に有効である一方、主としてPoint of Interest(POI)を対象としていることを示している。
昨年度の研究では、町田駅周辺の公共トイレ、飲食店、出入口、エレベーター等を調査した。しかし、点情報だけでは、入口から目的地までの移動、階層間の接続、迂回の必要性を十分に理解できないことが明らかになった。
近年、Project PLATEAUでは、地上・地下を統合した3Dナビゲーションや、建築物・道路の福祉対応性を3D都市モデル上に可視化する実証が行われている。また、Majic et al.(2026)は、車椅子移動には道路種別、路面、勾配、障害物等のOSM情報が重要であると指摘している。
本研究の目的は、Wheelmap公式3Dプロジェクトとの協働により、立体アクセシビリティ情報の要件を整理し、3D表示が2D表示より移動条件の理解を改善するか検証することである。
- RQ1: OSM・Wheelmap・PLATEAUの既存データで、町田駅周辺の立体的な移動条件をどこまで表現できるか。
- RQ2: 3D表示は2D表示と比べて、出入口、エレベーター、階層、迂回の理解を改善するか。
- RQ3: 町田駅で得られた知見を、公式3Dプロジェクトへ再利用可能な要件・データ・提案として還元できるか。
JR町田駅・小田急町田駅周辺のうち、上下移動や迂回が発生する1〜2経路、20〜40地物程度を対象とする。
昨年度の調査地点を、OSM ID、確認日、情報源とともに再整理する。さらに、次の情報をOSM、PLATEAU、現地調査から収集する。
- 車椅子対応状況
- 出入口、階段、エレベーター
- 階層と接続関係
- 段差、勾配、路面、幅員
- 最終確認日と根拠
Wheelmap公式担当者および古橋先生と、対象とする利用者課題、必要なデータ、3D表示方法、成果物の公開範囲を協議する。決定事項や仕様変更を記録し、研究結果をGitHub Issue、仕様書、プロトタイプ等として還元する。
同じアクセシビリティ情報を表示する2D版と3D版を制作する。参加者に「車椅子対応入口を探す」「エレベーターの位置を確認する」「上下移動を説明する」等の課題を実施してもらい、正答率、所要時間、確信度、操作性を比較する。
可能な範囲で車椅子利用当事者や支援者の協力を得る。自動的な安全ルート推薦や、町田駅全体の精密な屋内3Dモデル作成は対象外とする。
- OSM ID・確認日・根拠を持つアクセシビリティデータ
- 町田駅周辺の2D・3D地図プロトタイプ
- 2D・3D表示の比較評価結果
- 立体表示に必要なデータと不足項目の整理
- Wheelmap公式3DプロジェクトへのIssue・提案
- 第三者が調査・更新できるデータ仕様と手順書
3D表示が入口、階層、エレベーター等の理解にどの程度有効かを考察する。同時に、視点操作の難しさ、地物の遮蔽、データ不足、更新コストなど、3D表示によって生じる問題も検討する。
また、公式プロジェクトとの協働過程を記録し、大学による地域実証の成果をオープンソースプロジェクトへ還元する方法と、卒業後も継続可能な運用条件を整理する。
| 時期 | 実施内容 |
|---|---|
| 8月 | 公式担当者との要件確認、対象範囲・データ仕様の決定 |
| 9月 | 昨年度データの再整理、現地調査、3D表示の技術検証 |
| 10月 | 2D・3Dプロトタイプの構築 |
| 11月 | 予備評価、公式担当者からのフィードバック |
| 12月 | 本評価、分析、Advent Calendar、本文初稿 |
| 1月 | IMRaD本文完成、学部提出、GitHub最終提出 |
| 2月 | 最終発表 |
こんにちは